R3予備試験 民法 再現答案

設問1

第1 本件売買契約について

1 Aは債務不履行を理由とする解除(542,543)を主張することが考えられる。その要件は①債務不履行②催告③催告後相当期間の経過である。

(1) Bは本件売買契約により本件ワイン1万本を引き渡すべき債務(以下、本件債務)を負っていたところ、本件ワインは火災や配電設備の故障で引用に適さない程度に劣化しており、結局本件ワインを引き渡していない。

(2) これに対し、Bは令和3年9月1日に本件債務の弁済の提供(493)を行っており、債務不履行の責任を追わないとの反論が考えられる。では、債務の履行として劣化した本件ワインの引渡で足りるか。

  本件債務はワインのうち、「冷蔵庫甲に保管中の乙農園の生産にかかる」ものとの条件が付されているからいわゆる制限種類債権(401)である。そうすると、Bは冷蔵庫甲に存在する限度で調達義務を負うことになり、その限度で劣化した本件ワインの引渡では履行として不十分であるということになる。もっとも、「物の給付に必要な行為」をすれば制限種類債権も特定物債権に転化し(同条2項)、調達義務を負わない。

  「物の給付に必要な行為」とは取立債務においては、物の準備・分離・通知を行うことをいう。

  本件においてBは令和3年8月28日、甲からワイン1万本以外の酒類を全て搬出しており、準備・分離があり、これを9月1日に引き渡すべき旨の賃貸借契約を締結しているから、実質的に通知と同視できる。

  従って、本件債務は同日に本件ワインを引き渡すべき特定物債務へと転化しており、上記の履行提供で十分であるということになる。

2   従って、Bの反論が認められ、本件売買契約を解除することはできない。

第2 本件賃貸借契約について

1 本件賃貸借契約についても同様に債務不履行に基づく解除を主張することが考えられる。

(1) Aは倉庫甲について、火災及び配電設備の故障という債務不履行があり、また本件賃貸借契約は本件売買契約と密接に関連したものであるから、一体のものとして解除することができると主張する。

(2)  もっとも、火災及び配電設備の故障は既に倉庫の使用に問題がない程度に復旧しているし、また上述した通り、本件売買契約の解除が認められないから、上記のような主張は認められない。

2 以上より、本件賃貸借契約を解除することはできない。

設問2―(1)

1 本件譲渡担保契約の有効性について

(1) まず、本件譲渡担保契約は一物一権主義に反し、無効ではないか。

  一物一権主義は①その必要性がないこと②工事の困難性から導かれる原則である。そこで、必要性があり、また適切な公示方法が存在する場合にはその例外を認めて良い。

    本件譲渡担保契約はいわゆる集合物譲渡担保であるところ、集合物譲渡担保は実際上その必要性があるし、また全体に占有改定の方法で公示を備えることができる。

  よって、本件譲渡担保契約は一物一権主義に反しない。

(2) そうだとしても、本件譲渡担保契約はその範囲が不明確であり、無効ではないか。

  集合物譲渡担保はその性質上、目的物が不明確であれば無効となる。

  本件譲渡担保契約を見ると、その担保権が及ぶのは丙倉庫に存在するアルコール分1%以上の飲料である酒類全てであり、十分明確なものと言える。

  従って、その範囲は明確であると言え、有効である。

2 本件譲渡担保契約の対抗について

(1) 本件譲渡担保契約が有効であったとしてもそれを第三者に対抗できるか否かは別問題である。

  確かに、集合物譲渡担保は常にその構成する物が変動するものであり、占有改定による対抗要件具備が及ばないようにも思える。

  しかし、そのように解せば、集合譲渡担保契約を対抗することはほぼ不可能であり、このような担保権を認めた趣旨を没却する。

  そこで、集合物譲渡担保は、その同一性が損なわれない限り、構成要素全てに占有改定による対抗要件具備の効力が及ぶと解する。

  従って、Cは本件譲渡担保契約を第三者に対抗することができる。

設問2―(2)

1 本件ウイスキーに本件譲渡担保契約の効力は及ぶか。

2 本件ウイスキー売買契約はいわゆる所有権留保であるところ、本件ウイスキーの所有権は代金支払いまでDに留保されており、Aには転売する権原が与えられているに過ぎない(条項②③)。

  そうすると、本件ウイスキーは未だAの所有物ではなく、丙倉庫に搬入されたことを持って直ちに譲渡担保契約の効力が及ぶと考えることはできない。

3 以上より、DはCに本件ウイスキーの所有権を主張することができる。

 

予想:F  評価:F

問題見た途端絶望した。

司法H30とかと同じで、論点より法的処理だなと言うことはわかったものの、何を論じれば良いか分からず、司法H30に引っ張られ、特定を論じてしまった。賃貸借は複合的解除だなと思ったが、これで空気を読んで単純に解除に当てはめれば良いと思考できなかった点がFに繋がったと思う。

設問2は、AG論証集に書いてあったことをほぼ引き写した。

民法は得意だと思っていただけに、この出来は残念だし、司法試験までに何とか民法的思考を磨きたい。